砂漠の果てのまた其の先に、冥界ではない異境の地があるという。遠路遥々を経て献上品の中に紛れ埃及にたどり着いた黒い種のような何か。アステカでも貴重なものとして捧げられたそれは麻の袋に詰められ神殿へと納められた。
「これは何? 扁桃?」
検品していた神官の横から、爪に黄土を塗り飾った王母の指先が見慣れない種を掬い上げた。手のひらで転がし、東から来る扁桃とも違う其れの香りを確かめる。
黒い種子はまるで土のような色をしており、乾いている。発酵しているのだろうか、独特の深み有る香りをしていた。何かによく似ている――普段から甘味料として使われる、いなご豆だ。
「それは加加阿ですね。元は異国の通貨として回ってきたんですが、どうも食用にもなるそうですよ。磨り潰して香辛料や糖蜜、乳と混ぜて飲むと精がつくそうで。私も一度頂きましたがなかなか効きましたねぇ♡」
と応えるのは今回の品を持ち込んだ海を渡った異境の神。あえて彼は媚薬になることは胸の中にしまっておいた。
「そう……え、すっごい固いじゃないこれ」
「そうそう。そこを奴隷にゴリゴリと砕かせ乳鉢で磨り潰させ、薬師が仕上げる秘中の……」
「アナタの国って野蛮なんだか文明的なんだかよくわからないわ……とにかく」
「はい」
「精がつくってことなら息子に飲ませたいわね。この頃疲れているみたいだから……って、本当に毒とか無いんでしょうねえ?」
細く描いた片眉を跳ね上げて王母は異境の神を睨めつける。加加阿は麻の袋の中へジャラジャラと戻された。
「ハッハッハッ。毒なんてありませんとも、神に誓って」
誓う方も誓われる方も神だ。検品の手を止めることになった神官は異境の神の態度に女神が怒りを表さないかと冷や汗が止まらない。
「……まあいいわ。飲ませる前に毒見の魔法を試しましょう」
彼女の愛息子天空神ホルスは今、埃及を治める善き王であった。
その日の夜ホルスが手にした杯の中にあるのは、葡萄酒ではなかった。茶でもない。ドロリとした質感は薄い粥に似ているがその香りは慣れ親しんだ、いなご豆糖だった。
母が一昼夜かけて丹念に乳鉢で磨り潰した加加阿という異国の薬は、温めた牛の乳で緩め、香辛料を入れた薬湯として出された。
就寝前の穏やかな時間である。
杯の中の緩い泥に似た薬湯を、ホルスは口に含んでみた。強い苦さと渋みに似た独特の鈍い酸味は確かに乳と相性がよく、足した肉桂の香りが疲れた身体に沁みた。
しかしどうにも強い苦味に自分で蝗豆糖を足してみる。すると、だいぶ飲みやすくなった。
口に風味が残る感覚はこの加加阿の齎すものだろうか。――ふと若き王の脳裏に浮かんだのは、叔父の淡桃色の肌をこの後味とともに味わえたら等という雑念だった。
疲れ魔羅である。
「うわっ泥飲んでる」
「えっ」
顔の横にまるで帷の様に赫色の髪が揺れ、はっと正気を取り戻した。
「お……叔父様」
灯火を受けて日中とは違う艶めき方をする髪。叔父の視線が手元の薬湯加加阿に注がれているとなれば必然的に腰布も叔父の視界に入るだろう。
「泥飲んで何おっ勃ててるんだお前」
嗚呼……声が完全に引いている。叔父の様子にガックリとしながら薬湯について説明した。
「へぇ……異国の通貨で薬ねぇ。妙なことをする奴らが居るもんだ。確かに蝗豆糖の香りだなコイツは」
まるで隼が草叢の鼠を攫うかのように杯を奪われてゴクリと一口飲まれた。
「ああっ! 叔父様コレは母上が」
「王様がケチケチすんなって。あー…そうだな、ちょっと待ってろ。葡萄酒取ってくるわ」
「……はい」
なお、腰布は立派な天幕を張ったままである。むしろ高さが増したまである。
ため息を付いて卓上にまだ半分以上薬湯加加阿の残った杯を置いてテラスへと出ると、白い月の光と夜風が頬を撫でた。此の儘頭を冷やしていれば何れ股座の熱も鎮まってくれるだろうか。――と。
「おう、待たせた」
声がしたのに、振り返ることをしないなど出来ない。
「ああ、待て待て甥っ子。今叔父様がよく眠れるもん作ってやるから」
「はい。……叔父様がそういうのなら」
「いや、なんでそこで正座してんだよお前は」
「……………」
……………。
甥の沈黙と勃起に呆れたように溜息を付いて、セトは酒蔵からくすねた葡萄酒を温めながら杯に注ぎ、加加阿を混ぜ合わせる。
「乳が入ってるッつったがまあイケるだろ。ああ、蝗豆糖の甘さ控えめって感じになったな。甥っ子には未だ早いか」
てっきりくれるのかと思ったら、叔父はそのまま一口、また一口と加加阿と葡萄酒の薬湯を飲み干してしまった。
「お前には蝗豆糖で十分だな」
なんだか本末転倒な気もひしひしとしたが、そのまま再び叔父が灯火で葡萄酒を温めて蝗豆糖を足してくれた物を持ってきてくれたので、立ち上がり受け取った。
ホルスが立ち上がった途端、彼の恵まれた体格に月明かりが遮られ叔父の身体は丸々陰の中に収まってしまう。
「有難う御座います叔父様」
「礼は良いからその当たってるもん何とかしてくんねえか」
「えっ」
「は?」
(加加阿の)こうかは ばつぐんだ!
遥か夜空に不快な髭面がウィンクと舌ペロをして浮かんで見えた。
さっさと星座になってしまえ。
さて、それはともかく。
「すいません叔父様。さっきから収まらなくて」
「はー……収まらなくてー、じゃねえだろ童貞か? なら叔父様は部屋に帰るわ」
踵を返して行こうとするその背中に反射的に両手が伸びた。
一歩踏み出すまでもない距離の肩を捕まえてぐっと己の胸元に掻き抱く。先刻なんとかしろと怒られたばかりなのに、こうして体を抱きしめてしまったら、もっと勃起が当たってしまう。
「は……」
「…テメ、ェ……なァ…」
「はい」
冠頭衣をしたまま首筋に鼻梁を擦り付け、塗り込まれた香油と混ざりあったほのかな叔父自身の香りを吸い込む。頬に触れるやや固い赫髪のザラつきが心地よかった。
「ハイじゃねえだろ。一人で寝れねえガキか」
身動ぎはするけれど十分に抑え込める程度の反抗を其の儘腕の檻で封じ込めて肩に齧り付いた。
己が裡の心の影がセトに傷を追わせるほどの獣慾を煽り、抑え切れずに溢れさせたのだ。
「は……くっ――馬鹿…」
強く逃げ出さない叔父の体を軽々と抱き上げて肩に俵抱きにしてテラスの脇に垂れる帷の陰に移動した。
ホルスが叔父を肩に担いだ時に薄々感じていた違和感は、その身を正対するように抱え直した時に確信へと変わった。
「そんなに強い葡萄酒でしたか?」
壁に叔父の背中を押し付け、片足を椅子代わりに跨がらせて体を支えながら赤みのさした頬を撫でる。
帳の陰という、外から見えるか見えないかの小さな牢に花を閉じ込めた気分だ。
赤銅色の自分の肌よりも、淡桃色の叔父の肌は赤らむとよく分かる。月明かりや灯火に照らした方がその艶めきは一層際立つのだが、今は暗い物陰でじっくりと観察するに徹した。頬にかかる長い髪をそっと掻き上げると、叔父ににべもなく手を払われそっぽを向かれてしまった。
「言ってくれないと分かりません」
「喧嘩売ってんのか」
やっとこっちを振り返って睨みつける赫い瞳が嬉しくて、つい顎を捕まえて唇を性急に奪ってしまった。
「んうっ」
葡萄酒と蝗豆の、いや加加阿の香りが唾液の匂いと混ざっている。なかなか唇を割ってくれない唯一の人を求め、ホルスは顎から首筋を撫でて首飾りの下に手を差し込むように胸を脇から寄せ上げてそぅっと掴んだ。叔父の肩がひくりと竦む。
「欲しいです。叔父様が」
ハトホルの柔らかな体とは違う、叔父が強張るたびに硬くなる胸。ホルスが腋窩から始まり、胸板の境を手の中に包んで体温を感じながら撫でさするように揉むと叔父の肩の震え方が変わった。背を丸めるのではなく、肩甲骨を寄せるようにビクつかせて、首筋から鎖骨の筋が浮く震え方。
「ん……はぁ…ふ」
ちゅっ ちゅぷっ ぴちゃ
未だ口を開いてくれない叔父の唇や鼻を何度も舐める。香油の残り香ではなく、自分のにおいで上書きしていくと太腿を跨ぐ腰が揺れて、やっと薄く唇を開いてくれた。
「……は…ァ――」
かすれた吐息を零し熱に浮かされたこの人の目をこんなに近くから、彼の元妻だって見たことは無いだろうと思う。この人はどんな顔で、叔母様と自分の子供を求めて体を重ねたのか。臍の下のあたりがぐらりと沸た。
「叔父様は俺を欲しがってくれますか」
甥にしつこく答えを求められたセトは呆れたように口を開けたまま目を瞬かせた後に、じわりとその眦に涙すら浮かべて顎を引いた。
部屋へと流れてくる夜風が帷をゆらす。興奮で火照り痛みだしそうな項を鎮めてくれるのに、脈打ち滾る腹の奥までは冷ませないようだ。
暫し互いの呼吸音ばかりが部屋に響く。頭の中を流れる血の音がこんなにもざあざあと騒がしい。二人の呼吸はいつしかリズムが重なり合い、掴まれたままのセトの胸もホルスの厚い胸も同じ様にゆっくりと上下した。
「ッ……ぅ―― ホル スッ 」
俺が怪物の体を持っていたら、この場でこの人を頭から食い千切って居ただろう。
凪の海に浮かぶ小舟のような己の胸の裡にも、自分はこんなにも爆ぜる衝動を、歓びを持っていたのだ。自分は母上の望む通りに英雄となっただけの空虚な人形ではない、人を愛する事が出来るのだと、彼に受け入れられてホルスは知ったのだ。
掌で包んだ唯一の人の真っ赤な顔が熱い。ゆっくりと顎を上げてくると見える、ふっくらとした唇に顔を傾げながら唇を重ねて柔く擦り合わせた。彼の白い手が何か言いたげに重なるけれどホルスにはその内心まで計りかねる。
だから出来ることと言えば。
「好きです」
口付けの合間に、自分の中にある数少ない語彙から己の心の形に合う言葉を探して紡ぐこと。それから、手放したりしないように抱き締めてその体の全てを自分の体で憶えること。
「知ってる ホルス」
「いいえ、叔父様 セト 俺はちゃんと伝えられていない」
太腿を揺らして体を揺さぶるとまだ指すら挿れてないのに息を堪える姿が尚煽る。舌を噛まぬように注意をはらいながら厚く柔らかい軟体を口中へと忍び込ませて、其処からセトの舌を吸い出して、絡め合わせる。
手は脇腹を撫でて、もう片手は黒い腰布を取り去って下へ捨てる。てっきり拒まれるかとおもった行為もセトは受け入れて、暗い帷の影の中、壁とホルスにその身を挟まれて反り返った己の雄根を晒した。
ホルスが片足を下ろしながら、腰布を捲りあげてだらだらと涎まみれになった長大な陰茎をセトのそれに擦り付ける。
「はぁ… ?」
触れるのはきっとお好きでないだろうから、自分の手で陰茎二本とも纏めて握り込み扱くとセトは堪えるようにビクビク震えながら脚を開いた。手持ち無沙汰に左手で自分の髪をくしゃりと掻き上げて腋窩を晒す仕草にまたドクリとホルスの雄は一段太くなってしまう。
「俺は――」
誇り高い砂漠と戦の神が、膝を開いて腰を前に突き出して泣きそうなのに快楽に溺れた顔を浮かべている。
「何も、分からなかった。母上が何故――逃げ回りながら、俺にあなたを倒せというのか」
「ぁっ――突然…何」
戸惑うセトの声に、背中を丸めてすべての視線から庇うようにホルスが抱きしめる。一度腰を引いて、今度はセトの反り返ったペニスの下にずるりと蛇のように太く長い雄根を滑り込ませ、手は後ろから焼けそうに熱い尻臀の谷間をなぞり指をつぷりと呑み込ませる。
「準備……してきて下さっていたんですね叔父様」
「そ、れは…ッ は ん゙ッ」
陰嚢の下と会陰をずるずると往復して前から素股するように、雄として強い大きさと硬さの性器で外を犯す。肉孔を指で辱めていく。
すぐに濡れた音を立ててセトの股下は濡れそぼり、雫は太腿まで垂れ落ちていく。
「今でも俺は解っていないんでしょう。俺は…生まれた時から、周りに何も……ッ…ありませんでした。ほしいと思う事もありませんでした」
「はっ……何言って…ぇ♡ ひ♡」
「無いものは欲しいと、思えなかった。地位も、財産も――権力も ッでも………」
「ぁ や♡ あっ♡」
片足を抱えて、指で拓かせたとも言い切れない肉壺の口に前射液まみれの亀頭を宛がう。あとは、腰を突き上げ、押さえつけ。
「ぉ――あ゙っ ひい゙ッ」
性急が過ぎたかもしれない。ぶつりと何処かが切れた感覚がして、唯一の人が苦しげに顔を顰めている。
「ッ――‼ 今止め…」
「止めんなッ ――はぁっ ホルスッ!」
苦しげに息を吐いているのに、涙で顔を歪めているのにセトは足をホルスの身体に巻き付けて彼に喝と声を上げ離れることを許さなかった。
「てめ――ぇ、の 思ってること…全部聞かせろ ッあ」
「でも……」
躊躇うのは口先だけだ。身体も心も、己の全てを唯一の人にぶつけ切ってしまいたいと思っている。
「全部 …叔父様が……ッ聞いて…やるって 言ってんだよホルスッ お前の父親と母親から 全部奪った俺が――う、ばい…返された俺が」
泣いている。ぽろぽろと涙をこぼして泣いている。
「もう 何もねえ…俺に お前の思ってたこと ――全部 寄こせ」
「ッ――‼」
「は、あッ! ひっ! い゙ッ」
セトの声は苦しげで、自分の陰茎はそんな彼に獣のように猛って隘路をこじ開けて擦り上げている。
「今は――叔父様が、セトが欲しいん…ですッ は あ゙ッ」
ぐちっ、ぐぷっ♡どちゅっ♡ばちゅっ♡と肌がぶつかり合い粘膜が吸い付いては掻き乱される音がする。
「この、 気持ちが――ぁ、貴方に たった名前を呼んでもらえるだけで震えるんです 叔父様ッ セト セトッ」
「ァあ゙ッ――く う ひっ」
二人の体の間でセトの陰茎が酷くすり潰され、陰嚢も押し潰されてしまいそうになる。
「俺は 心があるんだ ――ッて あ 貴方に受け入れられたい我儘と、絶対に…手放したくない――意地が…心が 有るんだって」
「っ〰〰! ホルス っひ」
「あなたを手に入れる為に――貴方の前に立ったんだって」
ホルスに縋るセトの爪が、深く肩に食い込む。
胸の内を吐き出しながら唯一の人の腹の中を犯す獣性を止められない。
「はっ ……ちゃん、と ――聞いて る からッ ホルスぅ」
張り出した陰茎の鰓で肉の襞を押し広げて道を作り、蠕き絡みつかれて背を震わせる。奥まで突き上げると、 ぼごっ と中で何かを超えて其処に先端が嵌り込み、雄杭全てが肉壺のなかに埋まった。
「ぅあ゙―― は」
二人共に眼の前がチカチカと閃光し明滅する。単純な快楽ではなく、深く深くホルスを受け入れたせいで許容量を超えてしまった杯から酒がこぼれだしてしまうような。
「俺だけの ものに――なって」
会陰の奥に自然と力が入る。熱く滾る睾丸が迫り上がり、一線を越えて。
「あ ああっ ひっ ぉお お゙♡」
びゅるるるるっ ぶびゅっ びゅくっ びゅくびゅくっ
濃い子種を、愛しい男の腹の奥へ注ぎ込む歓びに肺が潰れてしまいそうだと感じた。
拙い言葉で、搾り出すように己の胸の内に芽生えた愛の言葉は、愛を捧げる誓いではなく愛を求める渇きの言葉だった。
「は……あっ……」
どくっ どくどくっ と肉壺の中で未だ砲身は硬くいつまでもその肉襞に包まれて脈打っている。
セトの手がホルスの頭を抱き締め、もう片方は腰を抱きしめた。
「ッ……じ…さま…」
自分の身体は父に似て叔父の身体よりも大きくなってしまったけれど、精神はまだまだこの人を追い越せないのだと、この人はやはり俺よりも大きく誇り高い人なのだと安心と愛しさが湧き上がる。
「ん…ぅ……ホルス…――お前…、こそ……言わなきゃわかんねえん…だよ」
ホルスは荒く息をつく唯一の人を抱きかかえて、寝台に横たえる。
「お前と同じ……好き、じゃ――無いかもしれねえけど」
仮面の下から覗く碧眼が細められ、赫色の自分を見つめている顔を見上げながら、セトが足を上げてその太く厚く、硬い身体に足を回し腰裏で足首を交差させた。
「お前の事……パピルス100枚有っても……書き、きれないぐらい……俺に教えろよ ホルス」
「いやです。…――俺ばっかり」
嫌なはずがない。しかし我儘を言わずにも居られない。母の教えを守り民の陳情を聞く若き王ではなく、年上の最愛に甘える未熟者としての自分を曝け出すしかできない。
「馬鹿ッ……ぁ…」
寝台にセトを抱き潰しながら結腸奥から腹全体を、性感全てをゆらす。
「話を聞け筋肉馬鹿ッ は……ぅ、あ……俺のこと、言わねえとは――一ッ言も……言って、ねえだろうが」
赤みを帯びたセトの首筋にまた歯を立て、歯型を刻み付けながら徐々に腰をゆらす動きに遠慮がなくなってくる。
「はっ ひ♡ ぁっ♡ おま あ゙♡」
「すいっ……ません 嬉しくてッ とても ッ 気持ちよくて あ」
身体を撓らせ、痛みもあるだろうに弱音も吐かずに己の肉槍の根本まで飲み込んで、腹を膨らませるセトの姿にホルスの腰が震える。
陰茎の質量で歪み膨らんだ腹を撫でて、そこから手は脇腹、胸元へと滑り。
「んっ♡ うっ♡ あ゙♡」
親指で大胸筋の厚みをなぞり確かめ、やがてたどり着く胸の肉粒、乳暈を指腹でするりするりと撫で回す。上擦った声を上げて鳴く頬へ啄むように口付けた。
「ほ――る ひゅ♡ は、ぁっ ほるしゅ♡」
彼の肉壺がうねって、中で肥大した痼の感触が絶頂が近いことを物語っている。
片手を、陰茎を飲み込んだ肉孔と睾丸の間に滑り込ませ、鈎に曲げた指の背でぐり♡ぐり♡と性腺を押し上げる。
「ひあうっ♡ ひぅ♡ あ♡ やめ♡ おんなに なる♡ それ、ぁ♡ あっ♡」
「…っ はい ――中に… 出しますから 俺の精液ッ」
「あ゙ー♡ あっ♡ なんっれ♡ またデカ、く♡ う♡」
セトの言う通り、ホルスの猛る雄槍は一際肥え、ぎゅぽっぎゅぽっと熟れた媚肉を掻き混ぜながらブルリと震え。
「あ、なたを 好き――だから ッあ ああっ」
どびゅるるるるっ♡ びゅうっ♡ びゅぐっ♡ びゅっ♡ びゅるるるるるるるるっ♡
「んひぅ あ゙ッ ぁ――〰〰♡♡♡」
赫色の最愛の腹を、溢れんばかりの濃厚な子種で満たしてホルスは打ち震えた。ただ体を重ねるのではなく、体温を感じるのではなく、彼も自分を感じているのだと信じてならない。
「おじさま……――じ…さま…セト セト…」
「は……ぅ んあ♡ へ…は…♡」
腰を押し付け、だくだくと注ぎ込んだ精液で泥濘んだ腹をぬちぬちと捏ねる。涙をなめとると、呆然としながらセトがホルスの冠頭衣の下に指先を滑り込ませ、頭を撫でた。
唇を啄み合うささやかな水音がいつまでも続いていた。
「はぁ⁉ なんでアンタが加加阿飲んだのよ! 貴重な薬湯だったのよ‼」
翌朝、王母の怒りの声が神殿に響き渡る。
「アンタ今あの子がどれだけ疲れてると思ってるの‼ 馬鹿‼ ほんっ――とうに自分勝手なんだから‼ 今度こそ地下に埋めるわよ‼ セト‼」
「いえ、母上俺は――…」
「王様がそう言ってんだから良いだろうが。それに疲れてるって言うなら休ませろよ」
「休ませてるわよ勿論。その上であれを出したっていうのに」
「おや、本当にお召し上がりになったんですか、加加阿。どうでした? 新王の坊っちゃん」
セトとイシスの言い争いにまた話を拗らせそうな男が首を突っ込んできたのだから、ホルスは一切の躊躇いもなく首根っこを掴んで二人から引き離す事にした。
「媚薬として効きました?」
「……精力剤では?」
「おっと」
口が滑ったとばかりに、ホルスの手元から異境の神はするっと抜け出して逃げていった。
「――もう一度ぐらい、持ってこさせても良かったか……」
「退け! 甥っ子‼」
セトがイシスに追いかけ回され、ホルスの横を飛ぶように走り抜けていく。
太陽の下に輝く赫髪に見とれていると、セトを諦めた母に呼ばれてホルスは政務室へ向かうのだった。